「ネバーランド☆A GO! GO!」を観た話
まず初めに。
「ネバーランド☆A GO! GO!」を未観の方
これから同作を観る予定の方
ちょっとでも同作を気になってる方
は、絶対にここでUターンをして欲しい。
いくらネタバレが平気な方でも読んではいけない。
この作品はネタバレが命取りになるので、絶対にこの先を読まずに作品を観てから、気持ちに余裕があればまた読みに来てくれるとありがたい。
上記に該当しない、既に履修済みの方、履修予定のない方、そもそも「ネバーランド☆A GO! GO!」って何?という方は少し長めの空白にお付き合い頂こう。
読んでいる人がいれば、お待たせしました。
ここからは大変に脈絡のない頭の悪い文章が続きます。脳内で舞台映像を補完して頂きたい。
先日、bpm公演「ネバーランド☆A GO! GO!」(以下、ネバGO)を購入した。
理由はまあ、豊永利行氏が出演していたというのもあるが、タイトルに反しホラー作品(作・演出の浅沼晋太郎氏はスリラーコメディと評している)というのも興味を引いた、ずっと観たかった作品だった。
説明するのが少し難しいので、端的に言うとこの作品はフィクションにフィクションを重ねたフィクションだ。冒頭だけ語らせてもらおう。
まず、テレビクルーが酷い台風の中、とある古い屋敷にやって来る。カメラのテープが切れ、仕方ないので休憩をすることになった一行。台風情報を求めてラジオを付けたり、別働隊に電話したりして過ごす面々。
やがて、その内の1人の男が、こんなことを言い出した。
「ここは15年前、凄惨な殺人事件が起きた場所だ。まだ報道に居た頃、何度か取材に来たことがある」
と。
ラジオのノイズが徐々に大きくなっていく。そこから聞こえる声が高らかにタイトルを謳う。
「ネバーランド☆A GO! GO!」
薄暗い明かりの中、語り手の男が舞台中央のドアを開けると、そこから15年前の殺人事件に関与した者たちが次々と出てくる。1人、また1人とピンスポに当たり、物語の上で鍵となる台詞を叫ぶ。これがまたかっこいい!!
やがて暗転し、時は遡る。
上演は2014年(最初演は2002年、そこから何度も再演や続編を繰り返し、この公演が最後の再演だそうだ)なので、そこから15年前の1999年の屋敷だ。
そこには雨の中、年齢や服装、集合時間さえバラバラの、11人の男女が居た。互いに顔も名前も分からず、突然召集が掛かったのだという。
そこへ、扉を叩く音。12人目の男が、集合時間から少し遅れてやって来た。更に13人目がやって来ると、何人かが彼を〝先生〟と呼んだ。
どうやら、ここは15年前にとある学習塾が行った合宿の場所で、彼らはそこに参加していた生徒と講師だったという。
顔と名前が一致せず、自己紹介を始めようとした彼らに、〝先生〟は叫んだ。
「ここで起きた出来事の記憶を無理に呼び起こすことは避けよう」
「薄れていくのならそれでいい。だから、自己紹介もしないでおこう」
皆一様に表情が曇り、その提案に同意していく。
そして、その中の1人が提案をした。
「15年前、オリエンテーションの時に使ったワッペンだかシールだかの名前を使うのはどうだ」
そういえば、と、少しずつ記憶が甦る者がまた語る。
「私が持ってきたお菓子のおまけのシールのことね」
「先生にはミッキーを渡した。私は門限が厳しいから〝シンデレラ〟のシールになったわ」
「それから、不思議な本ばかり読んでいた女の子にはアリスのシールをあげた」
「なら、憶えている人間はそれを引用、憶えていない人間は俺が考えたあだ名でどうだ、俺は全員の素性を知っている」
聞けば彼は、先生があらゆるメディアに流した、あの時あの場所に居たものにしか分からない
「誰にも言っちゃあ、ダメだよ」
というメッセージに1番に気づき、一緒に流していたメールアドレスに連絡をした最初の生徒だった。彼は自らを情報通だから耳の大きなダンボと名乗った。
憶えている者はそれぞれ名乗りを上げ、憶えていない者はダンボに名付けられた名を宣言し、15年前の契りともいうべき、缶に入れて埋めた合宿のしおりを手に取った。
先生はミッキー
門限が厳しいからシンデレラ
本ばかり読んでいるからアリス
情報通だからダンボ
現役警察官のウッディ
脚が速いからバンビ
バンビの弟のドーピー(おとぼけ)
マジシャンのアラジン
怖がりのピグレット
嘘つきのピノキオ
歌が上手いからアリエル
この場にまだ来ていないおしゃべりのドナルドと、既に亡くなっているグーフィーとプルート。
そして、ここで未だ名乗らず怪しい動きをする男が2人。その内の1人が「何かおかしいと思わないか?」と語り掛け、暗転し、また現在(2014年)に戻る。
と、このように現在、15年前、30年前を行き来するというこの舞台。まあ頭が混乱する!!
ここまで読んでいる人はきっとみんな知っているだろう(興味が無くて読んでいる人は置いていく)からさらっと流すが、この2人とはイタズラでメールを送った部外者にも関わらず参加出来てしまった者たちだ。彼らこそ、サエキ(演:豊永利行)とホリウチ(演:浅沼晋太郎)。
こいつらが最高に馬鹿で、コメディを一身に背負っている。そして、サエキのみがこの空気を異様に感じ、危機感を少しずつ募らせていき、更に我々観客と同じ立場に立って推理をしてくれる。
ここからは掻い摘んで好きなシーンとか良いシーンを語っていく。もう説明とか無理でしょ!!
と、いうわけでまあ、イタズラで参加してしまった2人は色々(コントをしたり遊んだり)あってチップとデールと名乗るわけだが、私の推し(豊永氏)はデールです。いや、推しが演じているというのを捨て置いても彼を推さざるを得ない。
何故って、あの世界のオアシスですよ彼は。
ねえ!知っている人はみんなそう思うでしょう!
はい、落ち着く。
落ち着いた。
イタズラをして驚かせ帰らせて、分け前を増やそうとするチーム(ピノキオ、ダンボ、ウッディ、アラジン、アリス)に、自分からではあるが巻き込まれ(ここに集まった理由は15年前の出来事でミッキーが見つけた4億円を分ける為である(と、みんなは思っている))、更にアホの子チップに振り回されながら立ち回る正義感の強い子デール…好きです。
ここで振り返っておこう。
この男女13人がここに呼び出された理由。それは、15年前の夏合宿に理由がある。
山の中、合宿に参加していた小中学生混合のミッキーの班は酷い雨に降られ、やむなく下山をする。その途中、現場となる屋敷に避難する訳だが、そこに塾長が1人で座っていた。そこへ無線が入る。「別の班の子供が2人、行方不明になった」「捜しに行って欲しい」と。その子供の名前はサエキとホリウチ。つまりイタズラでメールを送ったあの2人は、同じ合宿に参加していた、ということだ。
話を戻そう。ミッキーは子供たちを塾長に任せ、1人、雨の中に出て行った。
子供たちは、まあ子供なので暇だしつまんないから隠れんぼをしようとジャンケンをし、ある女の子が負けて鬼になってしまう。
10まで数える途中、その場にいた塾長にラジオをつけるように言われる。
暖炉の上にあるラジオをつけると、塾長に後ろから抱き締められた。拒否をすると平手打ちをされ、恐怖に怯え萎縮してしまった彼女は助けを求める。
「せんせいたすけて!みんな!たすけて!!」
その声を聞きつけて部屋の奥から駆けてきた2人の男子生徒の内1人がテーブルの上にあった先の尖った鉛筆を、塾長の頸動脈に突き刺し、殺害。
戻ってきたミッキーはその惨状を見ると、その場にいた生徒13人と自ら、全員に尖った鉛筆を持たせ、首筋を刺すように指示した。
そして、この事件を口外しないように缶の中にしおりを入れ、地中に埋めた時に言ったのが「誰にも言っちゃあ、ダメだよ」だった。
サエキとホリウチは、たまたまミッキーの班のその行動を見ていて、タイムカプセルを埋めているのだと勘違いして掘り返し、自分たちのも入れていた、というのが大筋だ。
その時、塾長に手篭めにされそうになった少女がアリエル、結果的に塾長を手に掛けてしまったのがプルートだった。
で!でだ!
この前提を踏まえた上での好きなシーンなのだが、ピノキオが殺された(見立て殺人で、「ピノキオは嘘を吐いて鼻が伸びてしまいました」というメールと共に斧が頭から、柄がちょうど鼻の中心に来るように刺さった状態で見つかった)後、チップとデールが話している所にアリエルが降りてくる。喉が乾いた彼女は、死んだ筈の塾長からのメールが届いた時に声を荒らげたデールに、いるはずの無いプルートの面影を感じ、声を掛ける、所謂〝月9のシーン〟。
今日はさ、15年前にけじめつけに来たんだ
それと、みんなに謝りに来た
握手しようぜ。握手出来ればもう完璧だ
なんにでもなれる、きっと
かっこよぅござんすねえ!!
ここ、このシーンのね、表情といい行動といい、あーーデールめっちゃ恋してんなぁ!!
そしてその後、デールのことを話すアリエルがもう他の男に対するそれと全然違うんだよなぁ。かっこよぅござんすねえ!
束の間の(心の)安らぎのあと、怒涛の見立て殺人が繰り広げられる。
100エーカーの森にはハチミツがいっぱい ー ピグレット
バンビは飛び跳ねるのがまだ下手でした ー バンビ
バンビは左脚の打撲のみで済んだ。
烏の羽なんか無くてもダンボは空を飛べたのです ー ダンボ
アラジンは溶岩の流れる洞窟を潜り抜けました ー アラジン
アリエルは人間の足を欲しがりました ー アリエル
ここ、が、本当に、むり
シンデレラはガラスの靴を置いていってしまいました ー シンデレラ
この時に見つかった足は実はアリスの足だった。
身体が大き過ぎて無理だよ、でもいい方法がある ー アリス
チップとデールは捜し物の手がかりを見つけました ー チップ
白雪姫は毒林檎を食べて眠ってしまいました ー ドーピー
遺体と同時に犯人が現れる。
黒ずくめの衣装を着たシンデレラ(本当はウェンディ)、仲間だと打ち明けたバンビ(本当はティンカーベル)、そして黒装束の男。
更に2人の女はミッキーを惑わせる。
〝今まで死んだ者は本当にその人か?〟
〝本当は生きているのではないか?〟
ミッキーは必死に思い出す。ここにいないドナルドの顔を。黒装束の男の、仮面の下を。
そして、ふと、記憶が甦ったと同時に、撃たれたはずのチップが起き上がり、目の前にいたデールを背後からハサミで刺す。そしてチップはデールにこう言い放った。
お前が探してた事件の犯人、俺ー!
チップが撃たれた時に届いたメールは、デールに向けたメールだったのだ。
黒装束の男はウッディで本当はフック船長、チップはドナルドであり、この一連の殺人事件の主犯ピーターパンであり、塾長の息子であるアオキトモハルであった。
この事件は、全てアオキトモハルの「あの年から誕生日にディズニーランドのチケットが届かなくなったから」という自分勝手な理由からなる復讐劇だったのだ。
結果としては生き残ったのはミッキーのみな訳だが、うん、あのね、疲れてきたのでこの辺は割愛します。みんな知ってるでしょ。その代わりにデルアリ(デールとアリエルのカプ)を少しだけ。
あのねぇ!!
アリエルの最期のシーン前後がとんでもなく良くてですね、あの、あのね、ほんっとに、はい。
アリエルは15年前にあんなことがあり、軽く男性恐怖症気味なところがある。
それを、ミッキーから事件の概要を聞いた時に理解したデールは、停電した時に抱き寄せるという行動をしなかった。なぜなら無理やり抱き締めてしまうという結果になりかねないからだ。(話の内容飛びすぎだな)
そこに重なるミッキーの下手に動くんじゃないぞも相俟って…だって殺そうとして言ってるんじゃないんだもん…助けようとして…しんどい
帰ったらさ、お前の歌聴かせてよ
そんな見え透いた死亡フラグにヲタクである私が気付かないと思ったの??
初見でもデール!お前そこ絶対何か来るから(2人は入口付近に立っていた。アリエルはドアの目の前)とりあえずお前アリエル抱き寄せろ!!ああでもそうか、それで再発したらお前のことだからな、いや今はそんな暇はない!アリエル「怖い」って叫んでるよ!ほら抱き寄せ
プァ-----
(↑クラクションの音)ほらーーーーー!!となるよ??
そしてその後だ。役者・豊永利行の真髄。
入口があった所には車、ヘッドライトが光る、デールとミッキーがボンネットの上にアリエルの脚を見つける、急いで閉める、デールが手を差し伸べようとする、遺体発見、脱力、虚ろな目、混乱、叫び…………………
1番演技が好きなシーンなのに、1番観たくないシーンである。
ほんと無理ーーー演技素晴らしいのに何でーーー?無理ーーー
その後、次々と仲間を撃つアオキなんだが、その後ろよ。刺された後ずーーっと細かい動きしてるの。天才かと思ったよ天才だったよ豊永利行!!!!!!
失血死に至るまでに、凍えるような寒さを感じるタイミングがあるという。それを!!彼は!!!やってるの!!!!!最初刺された直後はただ脱力してるだけなのに、だんだん身を縮めて指を口元に持っていき温めるような仕草をしながら限界を悟り、すぐ近く車の上に投げ出されているアリエルの方へ手を伸ばす。
ピュアっピュア!!!!!
天国では仲睦まじく末永くお幸せにね……( ;꒳; )
とか言ってるけどここまでの凄惨な事件、15年前のも30年前のもぜーーーーんぶ冒頭の語り手の作り話。
漫画家である奥さんのプロットを元に改変し、仲間たちに話していただけだった。
なぁーんだぁー!
これを観てからというもの、浅沼晋太郎という男が末恐ろしくなりました。
しかも大学の先輩である、私の大好きな小林賢太郎氏とも面識があるどころかお話をしたことがあるってんだから歓喜ですよねぇ(コメンタリー参照)。
以上、感想でした。だはー⤴♪